生理前のつらい不調を薬膳でケア：身近な食材と簡単レシピ
はじめに
生理前になると、なんだかイライラしたり、体がむくんだり、お腹が張ったり、いつもの自分と違うと感じることはありませんでしょうか。これは月経前症候群（PMS）と呼ばれることもあり、多くの女性が経験する体の自然な変化の一つです。
「生理前の不調は仕方ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、薬膳や養生の考え方を取り入れることで、こうした不調を少しでも和らげ、毎月をより快適に過ごすためのヒントが見つかるかもしれません。
薬膳というと特別な食材が必要で難しそう、お金がかかりそう、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。いつものスーパーで手に入る身近な食材を意識して選ぶことから、薬膳・養生は始められます。この記事では、生理前の不調に対する薬膳的な考え方と、身近な食材を使った簡単なケア方法をご紹介します。
生理前の不調、薬膳ではどう考える？
薬膳や中医学の考え方では、私たちの体は「気（き）」「血（けつ）」「水（すい）」という3つの要素がバランスを取りながら巡ることで健康が保たれていると考えます。生理は女性にとって、この「血」が大きく関わる体の働きです。
生理前は、この「気」「血」「水」のバランスが変化しやすく、特に「気」の巡りが滞りやすくなったり、「血」が不足しやすくなったりする時期と考えられます。
- 気滞（きたい）: 「気」の巡りが滞ると、イライラしたり、憂鬱になったり、胸やお腹が張ったりといった症状が出やすくなります。風船のように体が張るイメージです。
- 血虚（けっきょ）: 「血」が足りない状態です。血は体に栄養や酸素を運び、心を安定させる働きもあるため、血虚になると、だるさ、めまい、顔色が悪い、気持ちが落ち着かないといった症状が現れることがあります。
- 水滞（すいたい）: 「水」の巡りが滞り、体に余分な水分が溜まる状態です。体がむくむ、体が重だるい、お腹がゴロゴロするなどといった症状につながることがあります。
これらのバランスの崩れが、生理前に感じる様々な不調と関係していると考えるのが薬膳的な視点です。自分の体の声に耳を傾け、「今の自分はどんな状態かな？」と感じてみることが、養生の第一歩となります。
身近な食材で生理前の不調をケアする
薬膳では、食材にはそれぞれ異なる性質（体を温める、冷やすなど）や、特定の働き（気の巡りを良くする、血を補うなど）があると考えます。生理前の不調に合わせて、体のバランスを整えるような食材を意識して取り入れてみましょう。
ここでは、よくある生理前の不調にアプローチする身近な食材をご紹介します。
イライラ、胸・お腹の張りに（気の巡りを良くする食材）
- 柑橘類（みかん、ゆず、レモンなど）: 香り成分が気の巡りをスムーズにすると言われています。皮も捨てずに活用するのがおすすめです。
- セロリ、パセリ、ミント: 香り高い野菜やハーブも気の巡りを助けます。
- 玉ねぎ、らっきょう: これらも気の巡りを良くする働きが期待できます。
- 春菊、三つ葉: 独特の香りが特徴的な葉物野菜です。
むくみ、体が重だるい時に（余分な水分を排出する食材）
- きゅうり、冬瓜: 利尿作用があり、体に溜まった余分な水分を排出しやすくします。
- あずき、とうもろこし: これらも水分代謝を助けると言われています。とうもろこしのひげ茶もおすすめです。
- はと麦: お茶としても手軽に取り入れられます。
だるさ、疲労感、気持ちが落ち着かない時に（気や血を補う食材）
- 米、もち米: 気を補う基本となる食材です。
- じゃがいも、さつまいも: 芋類も気を補う力があります。
- 豆類（大豆、黒豆など）: 気と血の両方を補うと考えられています。
- ほうれん草、小松菜: 鉄分も豊富で、血を補う働きが期待できます。
- プルーン、なつめ: ドライフルーツは手軽に血を補うおやつになります。
- 鶏肉、牛肉、卵: 良質なたんぱく質は気と血を作る材料になります。
日常生活への簡単な取り入れ方とレシピ
薬膳・養生食は、特別な献立を毎日用意する必要はありません。普段の食事に、上記のような食材を意識して少しずつプラスするだけで十分です。
- いつもの味噌汁やスープに: 玉ねぎやセロリ、きのこ、豆腐などを加えてみましょう。
- サラダや和え物に: パセリを散らしたり、柑橘類の果汁や皮を使ったり。
- 飲み物で: ミントティーや、ゆず茶、とうもろこしのひげ茶などを試してみましょう。
- おやつに: ドライフルーツ（プルーン、なつめなど）やナッツ類は手軽に摂れます。あずきを煮て砂糖控えめのおやつにするのも良いでしょう。
ここでは、身近な食材で簡単にできる薬膳風レシピを一つご紹介します。
レシピ：気の巡りをスムーズに！柑橘とセロリの簡単ホットドリンク
生理前のイライラや張りが気になるときに。柑橘の香りとセロリの風味でリラックス。
材料:
- みかん 1個 または オレンジ 1/2個
- セロリの葉（または茎の細い部分）少量
- 熱湯 200ml
- お好みではちみつ 少々
作り方:
- みかんは皮をむき、薄皮ごと小さくちぎります。
- セロリの葉は刻みます。
- カップに1と2を入れ、熱湯を注ぎます。
- 蓋をするかラップをして3〜5分蒸らします。
- お好みではちみつを加えて混ぜ、温かいうちにいただきます。
ポイント: 柑橘の皮にも気の巡りを助ける成分が含まれていますが、無農薬のものを選ぶか、よく洗って少量だけ加えるようにしましょう。
まとめ
生理前に感じる様々な不調は、体の自然な変化であり、誰にでも起こりうることです。これらの不調に対して、薬膳や養生の考え方を知り、身近な食材を意識して取り入れることは、ご自身の体をいたわる大切なセルフケアにつながります。
完璧を目指す必要はありません。今日ご紹介した食材の中から、一つでも二つでも「これなら取り入れられそう」と感じるものを見つけて、いつもの食事に加えてみることから始めてみてください。ご自身の体の声に耳を傾け、無理なく、楽しく、心地よい食生活を続けることが、生理前の期間を少しでも穏やかに過ごすことにつながるでしょう。
もし不調が重い場合や長引く場合は、専門家や医療機関にご相談ください。