身近なスパイス・ハーブで始める薬膳・養生:キッチンにあるもので簡単体調ケア
薬膳や養生食と聞くと、特別な食材が必要で、なんだか難しそう…と感じている方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、普段皆さんのキッチンにある身近なスパイスやハーブにも、体の調子を整える素晴らしい力があるのです。
このコラムでは、そんな身近なスパイスやハーブを使った、初心者さんでも無理なく始められる簡単な薬膳・養生の方法をご紹介します。いつものお料理に少し加えるだけで、体の内側から整えるヒントが見つかります。
薬膳におけるスパイス・ハーブの考え方
薬膳では、食材の一つ一つに「性味(せいみ)」という性質があると捉えます。これは、その食材が体を温めるのか冷やすのか(性)、そしてどんな味を持つのか(味)を示すものです。そして、それぞれの性質が体の中でどのように働くかを考えて、体調や季節に合わせて食材を選び、組み合わせます。
スパイスやハーブも例外ではありません。例えば、体を温める性質を持つもの、巡りを良くするもの、気を補うものなど、それぞれに特徴的な働きがあります。これらの性質を知って日常に取り入れることで、特別なことをしなくても日々の体調管理に役立てることができるのです。
キッチンにある身近なスパイス・ハーブと薬膳的な性質
皆さんのキッチンにもきっとある、身近なスパイスやハーブをいくつかご紹介しましょう。それぞれの薬膳的な性質を知ると、普段の料理が養生ごはんになります。
- 生姜(ショウガ)
- 性質: 体を温める代表的な食材です。特に生の生姜は体の表面を温めて発汗を促す性質があり、風邪のひきはじめなどに良いとされます。加熱したり乾燥させたりすると、体を芯から温める力が強まります。
- 活用例: 薬味として使う、生姜湯にする、炒め物や煮物に加える。
- ネギ(ネギの白い部分)
- 性質: 体を温め、発汗を促す性質があります。気の巡りを良くする働きもあるとされます。
- 活用例: 薬味として使う、お味噌汁やスープに入れる、炒め物に入れる。風邪のひきはじめに刻んだネギを熱湯に溶かして飲むなどの民間療法もあります。
- ニンニク
- 性質: 体を温め、気を巡らせる力が強い食材です。食欲を増進させ、消化を助ける働きもあるとされます。
- 活用例: 炒め物、パスタ、煮物など、様々な料理の風味付けに。
- シナモン
- 性質: 体を強く温める性質があります。血行を促進し、体の冷えによる不調(特に手足の冷えなど)の緩和に役立つとされます。
- 活用例: デザート(りんごのコンポートなど)、飲み物(紅茶、ミルク)に加える。
- クミン
- 性質: 体を温め、消化を助ける働きがあるとされます。気の巡りを良くする性質もあります。
- 活用例: カレー、炒め物、肉料理などに。
- 唐辛子
- 性質: 体を非常に強く温めます。血行を促進し、発汗を促すことで、冷えからくる不調に良いとされます。ただし、使いすぎは体に負担をかける場合もありますので少量から試すのがおすすめです。
- 活用例: 炒め物、汁物、薬味として。
- ミント
- 性質: 体の熱を冷まし、気の巡りをスムーズにする働きがあると言われています。気分をリフレッシュさせたい時にも良いでしょう。
- 活用例: ハーブティーとして飲む、サラダやデザートの飾り、肉料理や魚料理の風味付けに。
- 大葉
- 性質: 体を少し温め、気の巡りを良くする働きがあるとされます。食欲を増進させる効果も期待できます。
- 活用例: 薬味、和え物、天ぷら、巻き寿司に。
これらはごく一部ですが、普段何気なく使っているものに、それぞれに体を整える力があることがお分かりいただけるかと思います。
簡単!いつもの料理にプラスするだけの養生アイデア
特別な薬膳レシピを考えなくても大丈夫です。いつもの料理に、ご紹介したスパイスやハーブを意識して少しプラスするだけで、立派な養生ごはんになります。
- 体が冷えているなと感じたら:
- 紅茶やホットミルクにシナモンパウダーをひと振り。
- お味噌汁やスープに、すりおろした生姜や刻みネギをたっぷり加える。
- 野菜炒めにニンニクと生姜を多めに使う。
- なんだか気分が晴れない、モヤモヤする時に:
- ミントティーを淹れてゆっくり飲む。
- 冷奴や和え物に大葉をたっぷり加える。
- 食欲がない、お腹の調子がイマイチな時に:
- カレーにクミンを少し多めに使う(消化を助ける目的で)。
- 料理の風味付けにニンニクや生姜を使う。
例えば、冷えを感じやすい方なら、普段のスープに生姜とネギを加える習慣をつけるだけでも変わってくるかもしれません。手足が冷たい時は、シナモン入りの温かい飲み物を意識してみましょう。
無理なく続けるためのヒント
- 少量から始める: たくさん使えば効果がある、というものではありません。まずは少量から、香りを楽しみながら取り入れてみてください。
- 好きなものから試す: ご紹介した中で、普段よく使うもの、好きなものから試してみるのがおすすめです。無理なく続けられます。
- 新鮮なものを利用する: スパイスやハーブは、新鮮な方が香りが高く、風味も豊かです。可能であれば新鮮なものを選びましょう。乾燥スパイスを使う場合は、開封後は香りが飛ばないように密閉して保存します。
- 体調の変化に意識を向ける: 特定のスパイスやハーブを取り入れた時に、自分の体にどんな変化があるか、少し意識を向けてみましょう。全ての人に同じように働くとは限らないため、ご自身の体に合うものを見つけていくことが大切です。
まとめ
薬膳や養生食は、決して難しいものではありません。キッチンにある身近なスパイスやハーブにも、私たちの体を整えるヒントがたくさん隠されています。
今日からでも始められる、いつもの料理へのちょい足し。それは、体への小さな気遣いであり、自分自身の健康と向き合う大切な一歩になります。ぜひ、あなたのキッチンにあるスパイスやハーブを手に取って、楽しみながら毎日の養生を取り入れてみてください。