夏の不調を薬膳・養生食でケア:身近な食材と簡単レシピで夏を快適に
夏の不調、薬膳・養生食で乗り越えるヒント
本格的な夏の訪れとともに、暑さや高い湿度によって体調を崩しやすいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。夏バテやだるさ、食欲不振、むくみといった夏の不調は、東洋医学や薬膳・養生の考え方では、夏の環境や体内の変化が関係していると考えます。
「薬膳」や「養生食」と聞くと、特別な食材が必要だったり、難しそうと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。私たちの身近にある食材にも、夏の体調を整えるのに役立つ力があります。この記事では、薬膳・養生の視点から夏の体の特徴を理解し、身近な食材でできる簡単な夏の養生法をご紹介します。
薬膳・養生から見た夏の体の変化と対策
薬膳や東洋医学の考え方では、季節は私たちの体と深く関わっていると考えます。夏は「火」の性質を持ち、体にとっては「熱」が高まりやすい季節です。また、日本の夏は湿度が高いため、「湿(しつ)」の影響も受けやすくなります。
体の中に余分な「熱」がこもると、のぼせや体のほてり、イライラといった症状が出やすくなります。「湿」がたまると、体が重くだるい、むくみやすい、食欲不振といった症状につながることがあります。
夏の養生では、これらの「熱」と「湿」のバランスを整えることが大切です。具体的には、体の余分な熱を冷まし、体内の湿気を取り除くような食事が推奨されます。また、夏は体力を消耗しやすいため、胃腸を労わり、気(エネルギー)を補うことも重要です。
夏の養生におすすめの身近な食材
では、具体的にどのような食材が夏の養生に役立つのでしょうか。身近なスーパーで手に入る食材の中から、夏の体におすすめのものをいくつかご紹介します。
体の熱を冷ます食材
- 夏野菜: トマト、きゅうり、なす、ピーマン、ゴーヤなど、夏が旬の野菜には体の余分な熱を冷ます性質(寒性または涼性と呼ばれる体の熱を冷ます性質)を持つものが多くあります。これらの野菜を生で食べたり、さっぱりと調理したりすることで、体にこもった熱を穏やかにクールダウンさせることが期待できます。
- 夏の果物: すいか、メロン、梨など、水分を多く含む果物も体の熱を冷まし、潤いを与えてくれます。ただし、体を冷やしすぎる場合もあるため、食べ過ぎには注意しましょう。
- ハーブ・香味野菜: ミント、しそ、みょうがなどは、体の熱を冷まし、気の巡りを良くする働きがあると言われます。香りは気の滞りを改善し、食欲増進にもつながります。
体の湿気を取り除く食材
- 豆類: 緑豆(りょくとう)やはと麦(ヨクイニン)は、体の余分な湿気や老廃物を排出するのを助けると言われる代表的な食材です。特に緑豆は熱を冷ます性質も併せ持っています。
- 瓜類: 冬瓜(とうがん)、きゅうり、へちまなども、体の湿気を取り除き、むくみのケアに役立つとされます。冬瓜はほとんど味がなく、様々な料理に使いやすい食材です。
- とうもろこし: とうもろこしの実やひげにも、体にたまった湿気を排出する働きがあると言われます。
胃腸を労わり気を補う食材
- 米類: お米は消化吸収が良く、体のエネルギー源となる「気」を補う基本食材です。お粥やリゾットなど、夏でも食べやすい形で取り入れるのがおすすめです。
- いも類: じゃがいも、さといもなども、胃腸の働きを助け、気を補う性質があります。
- 豆類(一部): 大豆製品(豆腐、枝豆)やそら豆なども、胃腸を助け、気を補うと言われます。
- 香味野菜(少量): 生姜やねぎは体を温めるイメージがあるかもしれませんが、少量であれば胃腸の働きを活発にし、食欲を増進する効果も期待できます。ただし、夏は体を温めすぎないよう使いすぎには注意が必要です。
夏の養生を簡単・経済的に取り入れるレシピ例
これらの食材を組み合わせて、日々の食事に無理なく取り入れてみましょう。ここでは、特別な技術や高価な食材を使わない、簡単なレシピ例をいくつかご紹介します。
例1:冬瓜と鶏むね肉のさっぱりスープ
体を冷まし、湿気を取り除く冬瓜と、胃腸を労わる鶏むね肉を使ったスープです。
- 材料: 冬瓜、鶏むね肉(またはささみ)、だし汁、薄口しょうゆ、塩、お好みで生姜の薄切り
- 作り方: 冬瓜は皮と種を取り除き一口大に切る。鶏肉も一口大に切る。鍋にだし汁、冬瓜、鶏肉、生姜を入れて火にかける。冬瓜が柔らかくなったら、薄口しょうゆと塩で味を調える。
体を穏やかに潤し、熱を冷ます効果が期待できます。冷やしても美味しいです。
例2:夏野菜と香味野菜の和え物
体の熱を冷ます夏野菜と、気の巡りを良くする香味野菜を組み合わせた一品です。
- 材料: きゅうり、トマト、なす(電子レンジ加熱など)、しそ、みょうが、お好みでしょうがすりおろし、酢、しょうゆ、ごま油
- 作り方: きゅうりとトマトは食べやすい大きさに切る。なすは加熱して冷まし、一口大にする。しそとみょうがは千切りにする。全ての野菜と香味野菜をボウルに入れ、酢、しょうゆ、ごま油、お好みでしょうがを加えて和える。
火を使わずに作れるので、暑い日でも気軽に試せます。
例3:はと麦と緑豆の炊き込みご飯
体の湿気を取り除くはと麦と緑豆をご飯と一緒に炊き込むだけ。
- 材料: 米、はと麦、緑豆、水
- 作り方: 米、はと麦、緑豆をそれぞれ洗う。炊飯器に米、はと麦、緑豆を入れ、通常の炊飯より少し多めの水加減で炊飯する。
湿気対策に効果的なご飯です。豆の風味も楽しめます。
日常に取り入れるためのヒント
- 旬の食材を活用する: 夏が旬の野菜や果物は、その季節の体に必要な栄養素や作用を持っていることが多いです。旬のものは栄養価も高く、経済的にも手に入れやすい傾向があります。
- 調理法を工夫する: 炒め物よりは、蒸し料理、茹で料理、和え物、スープなど、油を控えめにしたさっぱりとした調理法が夏にはおすすめです。火を使う時間を短くできる電子レンジや和えるだけの料理も活用しましょう。
- 水分補給に気を配る: 暑い夏は汗をかきやすいため、こまめな水分補給が大切です。麦茶やルイボスティー、薄めた緑茶など、カフェインが少ない飲み物を選んだり、先の緑豆スープのような食べるスープで水分を補給したりするのも良い方法です。冷たい飲み物ばかりだと胃腸に負担がかかるため、常温や温かいものも取り入れましょう。
- 完璧を目指さない: 毎日全ての食事を完璧な薬膳・養生食にする必要はありません。今日ご紹介した食材の中から一つ加えてみる、いつも飲むお茶を麦茶に変えてみるなど、できることから少しずつ試してみてください。
- 「食べることは生きること」: 食事は私たちの体と心をつくります。難しく考えすぎず、「今の自分に必要なものはなんだろう?」と、体調に耳を傾けながら、食べることを楽しんでみてください。
まとめ
夏の暑さや湿気による体のだるさや不調は、薬膳・養生の考え方を取り入れることで、穏やかにケアすることができます。身近な夏野菜や豆類、香味野菜などを上手に活用し、体の余分な熱を冷まし、湿気を取り除くような食事を心がけることが夏の養生のポイントです。
特別な食材や難しい調理法は必要ありません。いつもの食事に旬の食材を一つ加える、調理法を少し変えてみるなど、小さな一歩から始めてみてください。ご自身の体と向き合いながら、身近な食材でできる夏の養生を楽しみ、快適な夏をお過ごしいただければ幸いです。