体を温める?冷ます?薬膳・養生「調理法」の選び方:身近な食材で簡単実践
薬膳・養生食に興味をお持ちいただき、ありがとうございます。このサイトでは、日々の食事が心と体の健康につながるヒントを、はじめての方にも分かりやすくお伝えしています。
薬膳や養生食というと、「特別な食材が必要なのでは」「調理が難しそう」と思われるかもしれません。しかし、いつものキッチンにある身近な食材を使い、少しの意識を変えるだけで、十分に養生は実践できます。
今回は、同じ食材でも調理法によって体に与える影響が異なるという、薬膳・養生の考え方をご紹介します。今のあなたの体調に合った調理法を知ることで、いつもの食事がもっとあなたの体にとって良いものになるかもしれません。
薬膳・養生で考える「調理法」の意味
薬膳では、食材それぞれが持つ性質(体を温める、冷ます、潤す、乾燥させるなど)を大切に考えますが、実はその性質は調理法によって変化すると考えられています。
例えば、夏野菜のきゅうりやトマトは、体を冷ます性質があると言われています。これを生で食べると、その冷やす性質をしっかり体に届けることができます。一方で、これらを温かいスープや炒め物に入れると、食材そのものの冷やす性質はやわらぎ、体を温める料理になります。
このように、調理法は単に食材を美味しくするための方法だけでなく、食材が持つ「性質」を調整し、体の状態に合わせて活用するための大切な手段と考えられています。
体を「温める」調理法と「冷ます」調理法
体への影響という視点から見たとき、調理法は大きく分けて「体を温める力を持つもの」と「体を冷ます力を持つもの」に分けられます。もちろん、その中間や他の影響(潤す、乾燥させるなど)もありますが、ここでは分かりやすく温冷に注目してみましょう。
体を温める傾向のある調理法
- 揚げる、焼く: 食材に強い火を加え、水分を飛ばす調理法です。体を温める力が比較的強いとされますが、消化に負担をかけることもあります。
- 炒める: 油を使って短時間で火を通す調理法です。温める力に加え、気の巡りを良くする働きも期待できます。
- 煮る(長時間): じっくりと時間をかけて煮込むことで、食材のエネルギーを引き出し、体を芯から温め、滋養する力が強まるとされます。
- 蒸す(一部): 蒸し料理は一般的に体を潤し、消化に良いとされますが、蒸気で体をじんわり温める効果も期待できます。
体を冷ます傾向のある調理法
- 生食、和える: 食材に火を加えないため、食材本来の性質がそのまま体に届きます。特に夏野菜や一部の果物などを生で食べると、体を冷やす働きが強まります。
- 茹でる(短時間): さっと茹でる程度であれば、食材の冷ます性質を残しやすいと言われます。
体を温めも冷ましもしにくい、または穏やかな調理法
- 蒸す: 体を潤し、胃腸に優しい調理法です。体への負担が少なく、穏やかな性質を持たせやすいです。
- 煮る(短時間): さっと煮る程度であれば、温める力は穏やかです。
あなたの体調に合わせた調理法の選び方
ご自身の今の体調や体質に合わせて、これらの調理法を使い分けることが養生につながります。
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冷えやすい、冬場、胃腸の働きが弱いとき: 体を温める調理法(煮る、炒める、揚げるなど)を中心にしましょう。根菜類や生姜などの体を温める食材を、炒め物や長時間煮込んだスープにするのがおすすめです。生野菜や冷たい飲み物は控えめにすると良いでしょう。消化が気になる場合は、蒸したり、柔らかく煮たりする調理法を選ぶと胃腸への負担が少なくなります。
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暑がり、体に熱がこもりやすい、夏場: 体を冷ます調理法(生食、さっと茹でる)を取り入れると良いでしょう。きゅうりやトマト、なすなどの夏野菜を、サラダや冷たい和え物で食べるのがおすすめです。ただし、冷たいものの摂りすぎは胃腸を冷やしてしまうこともあるため、バランスが大切です。
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乾燥しやすい、空気が乾燥しているとき: 体を潤す調理法(蒸す、煮る)が適しています。特にスープや煮込み料理は、食材の水分や栄養も丸ごと摂ることができ、体の中から潤いをサポートします。
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胃腸の調子がすぐれないとき: 消化に負担をかけにくい、蒸したり柔らかく煮たりする調理法を選びましょう。油っぽい揚げ物や炒め物は避けるのが賢明です。
身近な食材で簡単実践のヒント
特別な食材は必要ありません。いつもの食卓に取り入れられる簡単な例をご紹介します。
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冷えを感じる日に:
- 大根や人参、ごぼうといった根菜をたっぷり入れた味噌汁やポトフ(煮る、長時間煮込む)。
- 玉ねぎと鶏肉の生姜焼き(炒める、体を温める生姜を加える)。
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体に熱がこもる感じがある日に:
- きゅうり、トマト、ワカメの酢の物(生食・和える、体を冷ます食材)。
- 豆腐とわかめの味噌汁(豆腐やわかめは体を穏やかに冷ますとされます。熱々ではなく少し冷まして)。
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なんだか胃が疲れているな、と感じるときに:
- かぼちゃやじゃがいものシンプル蒸し(蒸す、消化に良い)。
- 消化の良い野菜(大根、カブなど)を柔らかく煮たスープ(煮る)。
このように、同じ食材でも調理法を変えたり、少し組み合わせを工夫したりするだけで、体への働きかけが変わってきます。
まとめ
薬膳・養生食における調理法は、単なる料理の手順ではなく、食材の性質を活かし、体の状態に合わせて調整するための知恵です。生で食べるのか、煮るのか、蒸すのか。今の自分の体に必要なのは「温めること」なのか「冷ますこと」なのかを少し意識するだけで、毎日の食事がもっと豊かな養生の時間になります。
完璧を目指す必要はありません。まずはいつもの料理で、食材に合わせて調理法を少しだけ意識してみるところから始めてみませんか。きっと、体の小さな変化に気づき、食事がもっと楽しくなるはずです。