身近な食材で始める薬膳・養生「蒸し料理」:簡単ヘルシーな体調ケア
薬膳や養生食に興味はあるけれど、「何から始めたら良いのだろう」「難しそう」「特別な食材が必要なのでは」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、養生のための食事は、毎日の食卓で、身近な食材を使って、簡単に取り入れることができます。
今回は、そんな身近な養生法のひとつとして、「蒸し料理」に焦点を当ててご紹介します。蒸し料理は、薬膳・養生食の考え方とも非常によく合う調理法であり、特別なスキルがなくても手軽に始められます。
薬膳・養生食としての蒸し料理の魅力
薬膳や養生食では、体への負担を減らし、食材の持つ力を引き出すことが大切だと考えられています。蒸し料理は、まさにその考え方にぴったりの調理法です。
1. 消化に優しい
蒸し料理は油を使わずに火を通すため、胃腸への負担が少ない調理法です。疲れていたり、胃腸の調子がいまいちだったりする時でも、比較的安心して食べることができます。薬膳では、胃腸は飲食物から「気(き)」や「血(けつ)」を作り出す大切な場所と考えられていますので、いたわることが基本となります。
2. 栄養素を逃がしにくい
食材を「蒸す」ことで、水溶性のビタミンなど、煮たり茹でたりすると流れ出てしまいがちな栄養素を比較的逃がしにくいと言われています。食材本来の旨味も閉じ込めるため、シンプルな味付けでも美味しくいただけます。
3. 体の「潤い」を保つ
特に空気が乾燥する季節や、体の中から潤いが不足しがちな時には、蒸し料理がおすすめです。体の余分な熱を冷ましつつ、乾燥を防ぐサポートが期待できると考えられています。
4. ヘルシーで体への負担が少ない
油を使わないため、カロリーを抑えやすく、体に重たい負担をかけにくい点も大きなメリットです。毎日の食事に取り入れやすい健康的な調理法です。
身近な食材で始める簡単蒸し料理のアイデア
蒸し料理は、特別な食材がなくても、普段お使いの身近な食材で十分に楽しめます。
どんな食材が向いている?
- 野菜: 葉物野菜(白菜、キャベツ)、根菜(大根、人参、かぶ)、きのこ類(しめじ、椎茸、えのき)、ブロッコリー、かぼちゃ、もやしなど、ほとんどの野菜が美味しく蒸せます。
- 肉・魚: 鶏肉(特にささみやむね肉)、豚肉の薄切り、鮭、たら、鯛などの切り身も蒸し料理に適しています。
組み合わせのヒント
薬膳の考え方を取り入れるなら、季節やご自身の体調に合わせて食材を組み合わせるのがおすすめです。
- 体を温めたい時: 鶏肉、生姜、ネギ、きのこ類などを組み合わせます。
- 胃腸を整えたい時: キャベツ、かぼちゃ、大根、鶏肉などを優しい味付けで。
- 乾燥が気になる時: 白菜、きのこ、豚肉などを組み合わせます。
- 気の巡りを良くしたい時: 柑橘類の皮(陳皮)、三つ葉、鶏肉などを風味良く蒸します。
これらの食材を参考に、お好きなもの、その時冷蔵庫にあるものから自由に組み合わせてみてください。
簡単味付けのアイデア
蒸し上がった食材は、シンプルな味付けがよく合います。
- ポン酢醤油+おろし生姜+ネギ
- 醤油+ごま油+酢
- 味噌+みりん+生姜(混ぜてタレに)
- だし醤油+すだちやかぼす
- シンプルに塩こしょうやハーブ
難しく考えず、まずは普段お使いの調味料で試してみるのが良いでしょう。
簡単・経済的に蒸し料理を始めるには
蒸し料理は、「蒸し器がないとできないのでは?」と思われがちですが、そんなことはありません。特別な道具がなくても、すぐに始められます。
特別な道具は不要です
- 方法1:鍋とざる(またはボウル)を使う 底に水を張った鍋の中に、耐熱性のざるやボウルを置いて、その中に食材を入れた耐熱皿を置きます。蓋をして火にかければ簡易蒸し器になります。
- 方法2:フライパンと蓋を使う フライパンの底に少し水を張り、その上に耐熱皿にのせた食材を置いて蓋をする方法も可能です。
- 方法3:電子レンジを活用する 耐熱皿に食材を乗せ、ふんわりとラップをかけて電子レンジにかけるだけでも、手軽な蒸し料理ができます。シリコンスチーマーを使うのも便利です。
これらの方法なら、今すぐキッチンにあるもので蒸し料理を始めることができます。
調理時間の短縮
食材を切って、お皿に乗せて、火にかけるだけ。煮込みのように混ぜたり灰汁を取ったりする手間もほとんどありません。忙しい日でも手軽に作ることができます。また、多めに作って翌日の分にしたり、冷めたらお弁当のおかずにするのも良いでしょう。
経済性
蒸し料理は、食材そのものの味を活かすため、たくさんの調味料や特別な材料が不要です。冷蔵庫に残っている半端な野菜などを美味しく消費することもでき、食材を無駄なく使える点でも経済的と言えます。
まずは一歩踏み出してみましょう
「蒸し料理」と聞くと少し手間がかかるイメージがあるかもしれませんが、ご紹介したように、身近な道具と食材で、驚くほど簡単に始められます。
まずは、今日冷蔵庫にある野菜一つからでも良いので、電子レンジで「蒸し野菜」を作ってみることから始めてみませんか。ポン酢をかけるだけでも、普段の食卓とは一味違う、体への優しさを感じられる一品になります。
週に一度でも、食事に一品蒸し料理を取り入れてみることで、体の変化を感じられるかもしれません。難しく考えず、「これならできそう」と感じたことから、ぜひ気軽に試してみてください。
まとめ
蒸し料理は、油を使わず、食材の持つ力を引き出しやすい、薬膳・養生の考え方に合った調理法です。消化に優しく、栄養素を逃がしにくい、体の潤いを保つサポートになるなど、様々なメリットが期待できます。
身近な野菜やお肉、魚を使って、特別な道具がなくても、鍋や電子レンジで手軽に作ることができます。まずは簡単な蒸し野菜からでも、ぜひ日々の食事に取り入れてみてください。
難しそうと思っていた薬膳・養生食も、こうした身近で簡単な方法からなら、無理なく、そして楽しく続けていけるはずです。ご自身の体調に合わせて、蒸し料理を日々の健康的な食生活に役立てていただければ幸いです。